小麦と大麦では用途が違い、パンには必ず小麦が原料、麦ごはんには必ず大麦が原料。大麦にはパンがふっくらするために必要なグルテンが全く含まれておらず、一方小麦は大麦ほど吸水率が良くないため、ごはんには向かないのです。
小麦のたんぱく質であるグルテンは粘りがあり、パンや麺に適しているのに対し、大麦のたんぱく質はホルデインと呼ばれ、粘りがないのでパンにすると膨れませんし、麺にするとつなぎがないので切れ切れになるのが特徴です。
しかし大麦の製粉技術と加工方法の改善によって、おいしいパンや麺ができようになりました。
大麦の種類は穂の形状による違いと、外皮のはがれやすい種類に分類されます。穂の形状を上から見た時に穀粒が六列に並んでいるのが「六条大麦」、二列に並んでいるのが「二条大麦」です。
穂の形 | 皮麦 | はだか麦 | |
六条大麦 | |||
品 種:すずかぜ 主な用途:麦茶・押し麦 |
品 種:イチバンボシ 主な用途:押し麦や味噌、醤油 |
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二条大麦 | |||
品 種:彩の星 主な用途:ビールの麦芽、焼酎 |
品 種:もっちりぼし 主な用途:押し麦や味噌、醤油 |
あまり知られていませんが、お米同様、大麦にも「もち性」と「うるち性」があります。
一般的に「もち性」のほうが、もちもちした食感で食物繊維が多い特徴があります。
もち性大麦とうるち性大麦種子中の水溶性食物繊維量(β-グルカン量)の含有量
もち性・二条大麦:もっちりぼし
うるち性・二条大麦:ビール麦
出典:2010年サッポロビール試験園場分析値
大麦と小麦の栄養成分はよく似ていますが、大麦の食物繊維の量は小麦の5倍近くあり、特に「水溶性食物繊維=βグルカン」が豊富に含まれているのが大麦の特徴です。
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、名前の通り、水に溶ける食物繊維と水に溶けない食物繊維です。
水溶性食物繊維は、水に溶けるとゲル状になることで様々な健康効果をもたらしてくれます。不溶性食物繊維は、水に溶けず体内の消化液で消化されることもないため、そのまま排出されますが、保水性が高くお腹の中で水分を吸って十数倍に膨らむので満腹感を得やすい栄養成分といえます。
栄養成分 100g当たり
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | ナトリウム | 食物繊維 | |||
不溶性 | 水溶性 | 総量 | ||||||
大麦粉 | 361kcal | 7.9g | 1.5g | 79.0g | 2.0mg | 4.5g | 9.7g | 14.2g |
小麦粉 | 368kcal | 8.0g | 1.7g | 75.9g | 2.0mg | 1.3g | 1.2g | 2.5g |
*大麦品種:もっちりぼし *大麦・分析機関:日本食品センター
*小麦粉成分資料:五討増補日本食品基準成分表
*食物繊維 含有量ランキング (g/100g可食部)
海外では、2006年、アメリカのFDAのヘルスクレーム認可を皮切りに、世界各国で「大麦β-グルカン」は健康維持増進に役立つと評価されています。ヘルスクレームがついた商品には、具体的な効果効能の表記がなされ、消費者が選択しやすいようになっています。
評価機関 | 関与成分 | 表示許可内容 | 必要量 |
Food and Drug Administration(米国2005) Health Canada(カナダ2012) |
穀類(大麦とオーツ麦)の可溶性食物繊維(β-グルカン) | 冠状動脈心疾患のリスク低減 | 1食あたり0.75g以上(1日3g) |
European Food Safety Agency(欧州2010,2011) |
大麦由来のβ-グルカン | 心臓疾患のリスク低減 コレステロール低下による |
1日3g以上 |
大麦・オーツ麦由来のβ-グルカン | 食後血糖値の上昇抑制 | 1食中の糖質30gあたり4g以上 | |
β-グルカンを含む大麦・オーツ由来の繊維 | 排便促進効果 | 1日3g以上 | |
Korea Food and Drug dministration(韓国2010) |
大麦由来の繊維 | 正常な腸機能の維持 | 食物繊維として1日25~30g |
国内では、2013年に有識者による試験の論文評価により、「大麦β-グルカン」が科学的に「健康機能性に根拠がある」と認められました。総合評価は、「血中コレステロール正常化」、「食後血糖値の上昇抑制」、「満腹感の維持作用」について、いずれも「機能性について肯定的な根拠がある」であり、健康効果があると高く評価されました。
機能 | 総合評価 | 研究の タイプ・質・量 |
一貫性 |
血中コレステロールの正常化 | B | B | B |
食後血糖値の上昇抑制 | B | A | B |
満腹感の持続効果 | B | B | B |
プレバイオテック効果 | 評価対象より除外 |
消費者庁委託事業平成24年度「食品の機能性評価事業」結果報告(2013.3.15)
A, 明確で十分な根拠がある; B, 肯定的な根拠がある; C, 示唆的な根拠がある;
D, 示唆的な根拠が不十分; E, 否定的な根拠がある
埼玉県農林総合研究センターでは、2007年からサッポロビールの協力を得て、水溶性食物繊維:β-グルカンを非常に多く含む「もっちりぼし」という品種の大麦を栽培しています。
*埼玉県の登録品種の「もっちりぼし」は、サッポロビールで13年間かけて開発された、
β-グルカンが豊富な、もち性二条大麦です。